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富士山クラブとは

沿革

富士山トイレ浄化プロジェクト

富士山トイレ浄化プロジェクト

富士山トイレ浄化プロジェクト

富士山トイレ問題の背景

富士山トイレ問題の背景

日本の象徴でもある富士山には、夏季の登山シーズン2ヶ月間だけで30万人もの登山者が押しかける。2000年当時、登山者の捨てるごみと並んで大きな問題だったのが、し尿問題だった。し尿については当時、ほとんどの山小屋や山頂の公衆トイレが、8月下旬に山肌への放流によって処理していた。この結果、自然の持つ浄化能力をはるかに超えるし尿が流され、山肌には「白い川」が出現していた。この「白い川」は美観を損ねただけでなく、悪臭や地下水の汚染など、環境汚染の原因として、大きな問題となっていた。

なぜ、し尿は放流されていたのか。富士山はその山体がスコリア(噴火の際に噴出した黒い軽石)で覆われているため浸透性が高く、水の確保が難しい。また山小屋のある場所は岩盤地帯が多く、浄化槽の設置も困難であり、水洗化が難しいため、汲み取り構造のトイレにせざるを得ない。ブルドーザーによってし尿を搬出するには手間と費用がかる。さらにブルドーザー専用の登山道から離れている山小屋ではそれも不可能で、放流していたというのが現実だった。

この当時、富士山の厳しい自然条件下でどのようにしてし尿を処理するのかについて、実証されたやり方はなかった。また、あったとしてもトイレ回収費用をだれが負担するのかなど、問題が山積しており、富士山のトイレ問題は八方ふさがりの状態だった。そこで、市民の力で何とかできないかと立ち上がったのが、富士山クラブである。会員のボランティアたちとともに、企業に働きかけ、技術協力や資金援助を得て、行政に働きかけた。富士山をこれ以上人間のし尿で汚くさせないという市民の強い思いが周囲を動かし、実証実験という形で、バイオトイレ設置へと踏み出したのである。

富士山クラブの取り組み

3年間かけて行われたバイオトイレの実証実験は、大阪吹田市に本社を置く設備会社、㈱東陽綱業から2基の「環境バイオトイレ」を供与していただいたことから始まった。以前からし尿問題の解消法を模索していた富士山クラブは、このトイレを実際に富士山に設置することでし尿問題の解消の糸口をつかめると考え、富士山クラブの「富士山トイレ浄化プロジェクト」として主体的に取り組むことにした。

富士山クラブの取り組み

関係省庁や行政から設置許可を得て、まず2000年度には吉田口・須走口の各五合目に、杉チップタイプの環境バイオトイレ2基を設置し、過酷な立地・気象状況下での有効性の実証実験を始めた。この裏に、山小屋の協力と多くの市民ボランティアや企業の協力があったことは言うまでもない。

続く2001年度には前年の経験と成果をもとに、様々な改良を環境バイオトイレに加えた。そのうえで、引き続き吉田口五合目に杉チップタイプ1基を設置、さらに気象状況の厳しい富士山頂に杉チップタイプ1基、おがくずタイプ1基の合計2基を、前年度以上の多くのボランティアや企業の協力を得て、仮設設置した。循環水の不足等のトラブルに見舞われながらも、山頂において約5000人もの登山者のし尿を二酸化炭素と水に分解し、富士山頂でもバイオトイレが機能することを立証することができた。

さらに、2001年度に富士山頂に設置された2基の環境バイオトイレは、最低気温約-30度、最大瞬間風速約45mという過酷な状況下において、初の越冬を試みた。

富士山クラブの取り組み

2002年度は富士山頂で越冬した2基のバイオトイレの実証実験に加え、山頂常駐スタッフによる環境バイオトイレの管理・運営、利用者に対するアンケート調査の実施などを行った。越冬した2基の環境バイオトイレは、過酷な自然環境によく耐えたものの、反応槽やトイレ棟の一部に、強風等による若干の破損が確認され、稼動中にも越冬の影響と見られるゴムパッキン等の劣化による稼動停止を余儀なくされたことが数回あった。それでも、トイレのシステムそのものは無事にシーズン中の稼動を続けることができたのである。

稼動終了後、環境バイオトイレは、設置許可条件に従い、速やかに撤去作業を行い、富士山頂から撤去された。なお、撤去した環境バイオトイレのうち、杉チップ式環境バイオトイレについては、富士山クラブ山梨事務所である「富士山クラブもりの学校」に移設され順調に稼動を続けている。

富士山クラブが2000~2002年度に実施した「富士山トイレ浄化プロジェクト」は、市民が作り上げた環境NPOによる、富士山のし尿処理問題の解決に向けての実践的・具体的な環境保全活動であった。行政に頼りがちで、問題の処理を先送りしがちな日本の環境保全問題の中では画期的なことであった。

富士山クラブによる実証実験の結果を受けて、環境バイオトイレには環境省や県の補助金が出ることになった。いまや山小屋には環境バイオトイレが完備され、登山者は快適なトイレ環境を享受することができる。富士山の世界自然遺産への挑戦を挫折させた一因ともいわれた「白い川」問題はこうして過去のものとなったのである。

最終更新日  2010年3月18日