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富士な人

荒 美知子さん

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「富士をきれいに」、がもたらす爽快感

荒 美知子さん

玄関の位置を変えてまで、作った居間の大きな窓から、さらにトイレ、お風呂と家中どこからでも富士山が見える。1年に2回は居ながらにして、ダイヤモンド富士を眺められる、なんとも贅沢な家に暮らして4年。四季はもちろん、一日の中でも刻々と変化する霊峰の表情を楽しんでいる。

05年7月、神奈川から山梨県富士河口湖町富士ケ嶺に移り住む。東京生まれの都会育ちだが、歳を重ねるにつれ、ご主人の明徳さんと「いつかは自然の中でくらしたい」と話すように。土地探しは1年半前から。週末は二人で車に乗り静岡県の伊豆から山梨県の八ヶ岳の麓まで。その時の「キーワード」は常に「富士が見えるところ」だった。

今のところはホームページで見つけた。「最初来た時は富士山がまったく見えず、さほど印象には残らなかった」。しかし半月後に再び訪れ、あまりに大きい富士の姿に二人は「ここに決めた」。しかし暮らしてみて、美しいはずの富士山のゴミに驚く。ご主人と「清掃活動をしよう」との思いが一つに。最初は5合目でゴミ袋を配ったことも。野口健さんのテレビコマーシャルをきっかけに富士山クラブの存在を知る。今では夫婦揃って定例清掃活動の常連だ。それだけに留まらない。自宅近くの青木が原を横断する県道71号線のゴミが「通るたびに気になって」と、町役場に掛け合い、ボランティア仲間5人で「月一会」を作る。毎月第一月曜日の1時から71号線沿いに落ちているゴミをひたすら拾う。1回に集まるゴミの量は、仲間の軽トラックに積みきれないほど集まる。「捨てる人がいる限り、やめるわけにはいかない」と専用の車まで買ってしまった。

荒 美知子さん

「これは富士山クラブの定例清掃にも言えることですが、我々が掃除していることを、もっと広く、いろんな人たちに知ってもらいたい。そうすれば捨てる人がいなくなるのでは」と「月一会」の清掃時には、道路脇に止めた車に「ただいま清掃中」の手作りの看板が掲げられる。

地域とのつながりもボランティアから。夫婦とも好きな読書で溜まった本を、引越しと同時に近くの小学校に寄付。それが縁で子供たちに本を読んで聞かせる「読み聞かせの会」に入る。仲間には農家や牧場の人たちもおり、それが地元とのつながりを深めている。

一寸先も見えない濃霧、遮る物が無い裾野を吹き抜ける台風の猛威、さらには干した洗濯物がみな凍ってしまう冬の寒さと、都会暮らしには驚くことが多い。しかし「何でも簡単に手に入る暮らしと違い、ここでは自ら動かないと何もできないことが、今でも新鮮に感じる」。そんな思いがボランティアへと導くのだろう。しかし本人はそんな理屈は一言も言わない。「清掃活動が終わった後の爽快感は、他では感じられません。夫婦で乾杯するビールは最高です」と笑うだけだ。

(富士山クラブ通信30号より転載)

最終更新日  2010年4月28日