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団体会員トップに聞く Vol.01

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富士急行株式会社 堀内光一郎社長

富士を世界に拓く
創業の精神をそのままに、環境と観光の共生を目指す

富士急行株式会社 堀内光一郎社長富士急行株式会社
堀内光一郎社長
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御社の創業精神は「富士を世界に拓く」と聞いております。今もこの精神は脈々と受け継がれているものと推察しますが、80年前の創業時と、今とでは同じ「拓く」でも、その意味は微妙に異なると思いますが、そのあたりからお話しいただけますか。
堀内
富士急は、「富士山の伝道師」みたいな存在だと思っています。創業当時の富士山は未開発で、麓に到達するにも大変でした。その様な中で初代社長の堀内良平は「開拓」という意味で、「拓く」と言っていたと思います。鉄道を敷き、道路・水道などのライフラインを整備し、別荘地を開きホテルを作り、ゴルフ場を整備することを80年前から始めたのです。これに対し、今は「開拓」をする時代ではありません。世界のお客さまを一人でも多く富士山にお越しいただいて、いかにグローバルスタンダードの快適な環境で、富士山を楽しんでいただき、そしてその結果、富士山を理解し、ひいては日本を理解し、愛していただけるよう努力することが我々の使命であり、それが「世界に拓く」ことになると思っています。特別な人でなくとも、素晴らしい富士山の眺望を楽しめるような、施設を整備することも大事な仕事です。たとえば去年の11月にオープンした「ふじやま温泉」では、樹齢200年を超えるケヤキを使用した日本一の大きさを誇る町家造りの純和風浴室の中から、富士を眺める贅沢を味わうことができます。日本の伝統を施設に生かし、外国人を含め多くの方々に富士山を楽しんでいただくという、広い意味で「富士を世界に拓く」になるのではないでしょうか。創業時の「物理的」な「拓く」から、多分に精神的な「拓く」に変わってきたのでしょう。
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世界遺産の暫定リストに載るなど、最近なにかと話題が多い富士山ですが、今の富士山を取り巻く現状を、どう考えておられますか。
堀内
私自身は大幅に改善され、いい方向に向かっていると思っています。富士山クラブが出来てからの9年を見ても、劇的に変化し、その多くの部分は富士山クラブの努力の賜物ではないかと思います。さらにこれが、日本の文化や民度の向上につながっていると思います。富士山クラブも我々も、富士山を世界遺産にすることはプロセスであり、目的とはしていませんが、世界遺産に向けさまざまな動きが、地元の人をはじめ、日本中の人の意識を変え、さらに、それが環境整備の原動力となってきたのではないでしょうか。
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そんな中で、さらに富士山を取り巻く環境で何かを求めるとしたら。
堀内
誤解を恐れずに言えば、富士山のゴミを拾うことはとても大事なことですが、ゴミを捨てる人がいなくなれば、ゴミを拾わなくてもよくなる。ですからさらにもう一歩、といわれれば、ゴミを捨てる人、さらにいたずらに自然を破壊する人、それらがまったくいなくなる状態を作っていくことなのではないでしょうか。それはまた、富士山クラブの初期の目的が達成されたることになるのではないでしょうか。
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では、そんな社会に向けて、社長ご自身、また会社として、こんなことをしたらいい、という具体的な方針はお持ちですか。
堀内
これは教育問題と同じで、こうすれば、こうなるという「特効薬」は多分無いのでしょう。しかし「衣食足って礼節を知る」の言葉もあるように、公共性や環境などをごく自然に感じられるような恵まれた社会を作ることが大事なのではないでしょうか。それに向け、富士山クラブなどが、たとえばゴミを拾うなどの地道な行為を続け、自分たちの考えを多くの人に広め、啓蒙することが一番の近道でしょう。それに向け会社として、私個人として、出来る限りの応援をしていていくつもりです。
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ところで、観光事業と環境はある部分、相反するところもありますが、両立させるために何が必要とお考えですか。
堀内
富士山を守る一番いい方法は、富士山の中心部から半径50キロ前後に柵を立てて、一切人の立ち入りを禁止することだと思います。しかし生活圏であり富士山が文化遺産の対象であり、大きな意味で教育の鏡的な存在であることを考えると、これは全く現実的ではない。国立公園という概念も、「優れた自然の風景地を保護するともに、その利用の増進を図り、もって国民の保健、休養及び教化に資すること(自然公園法第一条より)」を目的につくられているのです。そこには人と自然の「共生」が大前提になっています。私は富士山の自然を保護しながら、より多くの人に触れてもらい、その中で、自然保護の意識の涵養とか、公徳心や文化度の向上を図ること。つまり富士山を触媒としながら結果的に国民の意識が向上して、環境保護というもっと大きな目的が果たされれば、単純に人が入ることによって何かが傷むというマイナスより、さらに大きなプラスが得られると思います。富士山を通して、世界の人々、日本の人たちが何かをつかみ、それがもっと大きな環境問題を考えるきっかけになる、そういう存在ではないかと思っています。ですから、観光事業を通じ多くの人に富士山の自然を感じ取ってもらい、その存在の貴重さ、大事さを考えていただくような機会作りをしていくことが、我々にとって大事な仕事になるのではないでしょうか。その意味から環境と観光は両立しうるものと思っています。

観光開発は木を植えることから

CNG(天然圧縮ガス)バスCNG(天然圧縮ガス)バスが富士山を走る~提供:富士急行(株)
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それでは具体的に環境に配慮されていることは。
堀内
まず低公害バス、CNG(天然圧縮ガス)バスを現在43台導入しています。独立峰の富士山にとって排気ガスがどのような影響を与えているかは議論の分かれるところです。私個人としては、ディーゼルエンジンを天然ガスに変えることで世界規模の環境負荷は低減されますが、富士山の自然が守られるとは考えておりません。しかし企業の姿勢として少しでも、環境負荷の少ないバスを走らせることによって、公共交通機関としての、環境を守る姿勢を示すのに最適だと思い、この方式がまだ実験段階の時から導入しました。さらには燃料電池車など、より環境にやさしいバスが開発されれば、積極的に導入していきたいと思います。
開業当時の富士ゴルフコース

開業当時の富士ゴルフコース。周辺の木々もまだまばら。~提供:富士急行(株)

開業当時の富士五湖国際スケートセンター

1961年開業当時の富士五湖国際スケートセンター(現富士急ハイランド)。周辺に溶岩原野が残っているのがわかる。~提供:富士急行(株)

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森をはじめとする、富士山の環境そのものを守ることもされていますね。
堀内
環境問題ということから言えばまず「森作り」というか、「木」の問題ですね。創立65周年事業として「富士急自然の森林」活動を展開。富士山麓での森作りを手がけています。さらに植えるだけなら簡単ですが、その後も毎年、下草を刈るなどきめ細かな手入れを続けています。さらにゴルフ場にしろ、遊園地にしろ、皆様方は富士急が森を切り開いて更地を作り、施設を作ったとお思いでしょうが、実は逆なのです。山中湖近くの「富士ゴルフコース」も、80年前に初代社長の堀内良平が、県からの要請を受け、ゴルフ場とホテルを作ったわけです。その当時の写真をご覧いただければ分かりますが、あたり一帯野原でほとんど木がありませんでした。コースとコースの間にも木がありませんでした。我々が80年かけて数千本の木を植え、育てた結果、緑に囲まれたコースになったのです。富士急ハイランドも、皆さんはきっと「木をなぎ倒した」と思ってらっしゃるのでは。実は違うんです。あの土地は1961年の開園当時は、真っ黒な溶岩野原でした。そこに膨大な土を入れ、木を植え、現在の「緑が豊な遊園地」が誕生したわけです。別荘開発にしても木をはじめとする環境を考えているんですよ。
まず「建築審査委員会」で、土地をお求めになった方が、設計された建物を、如何に景観にマッチし環境負荷が少ないかを検討する。さらに木を切らざるを得ないときは、伐った本数以上の木を植えていただくよう、お願いしています。ですからわが社の別荘地をお買い上げいただくことは、他の分譲地をお買いになるよりも、お金がかかります。しかし70年間、森を作りながら別荘地も作ってきたことで、わが社の別荘地はうっそうとした森の中にあります。その結果、富士山が見え難い別荘地になってしまいましたが(笑い)。また、社内の話をして恐縮ですが、富士急の管理する土地で木を切るとき、具体的には「胸の高さで直径10センチ以上の木」を切るときは、すべて「社長決済」が必要です。必ず私の所に報告が回ってきます。その時の私の答えは決まっています。「植え替えろ」です。残念ながら時期が悪く枯れてしまうものもありますが、わが社は「木を切らない」ことを原則としています。このようにわが社はさまざまな環境対策を行っておりますが、やはり一番大事なのは「人つくり」なのではないでしょうか。
山頂バイオトイレ設置のために杉チップを運ぶ社員のみなさん

山頂バイオトイレ設置のために杉チップを運ぶ社員のみなさん

総勢200人が協力、富士山のトイレが大きく変わるきっかけに

総勢200人が協力、富士山のトイレが大きく変わるきっかけに

運んだ杉チップが、富士山クラブ山頂バイオトイレに投入されるのを見守る社員のみなさん

運んだ杉チップが、富士山クラブ山頂バイオトイレに投入されるのを見守る社員のみなさん

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社員教育ということですか。
堀内
そうですね。4000人近い富士急グループで、如何に一人ひとりが「富士山を守りたい」と思い、さらに「環境を大事にすることが結果的に会社を守ることなのだ」という意識が持てるかどうかがまず基本で、有用性の高い環境保護活動だと思います。その意味から、わが社の社員はそのような意識が徹底されていると、私は自負しております。
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新入社員が毎年、富士登山を行っていますね。
堀内
はい。最初はゴミ拾いを体験させるのが目的でした。最近はゴミがありませんから、あまりその意味での成果は無いのですが、新入社員は必ず「清掃登山」を行います。創立45周年(1966年)から、「全員登山」を数回行っています。私も5回参加しました。富士の偉大さを感じ感謝しつつ、当時はまだゴミの山でしたから、全員が数トンのゴミを拾って帰ってきました。最近は昨年8月に若手を中心とした清掃登山を実施しました
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最後に、富士山クラブの副会長として、富士山クラブの今後をどうお考えになりますか。
堀内
実は私は両生類です。地元(山梨)の人間でもあり、東京でも生活・仕事をしています。都会の人々は富士山を登らずとも、遠くから眺め、とにかくきれいなままでいて欲しいと思っています。一方地元では富士山は、生活の場でもあり理想論だけでは解決出来ない難しい要素がたくさんあります。「おらが富士山」でもあり、意識差は大きいと思います。同じ地元でも河口湖、富士吉田、西桂、都留では意識が異なります。環境保護の問題にしても世界遺産問題にしても、コンセンサスを得るのは本当に難しいですが、しかしその中で富士山クラブの果たした役割は大変大きいと思います。都会の人々が地元と融合することに努力をしてきました。NPOとして今の富士山クラブは、いろいろな考えを持っている地元の方々、さらには東京を中心とする都会の方々、もっと言えば世界の方々まで、うまく結び付けて融和をさせるような努力をし現に成果を上げつつあります。大切な接着剤というか融合剤、その様な存在になりつつある。これからも、こういうことを、メンバーの一人としてお手伝いしたいですし、クラブとして地道な努力を今後も末永く続けていくべきだと思います。

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最終更新日  2018年11月 8日